t4.5 (2001) 鉄、H鋼 |
鉄板で立方体を作る際、材料として6mmの厚さを越えるものを利用すると、ムクの鉄塊との区別が困難になる、という。これは彫刻の台座などを作る際のノウハウとして語られていることである。 立体裁断と言われる手法で成形されるジャケットは、言うまでもなく平面素材である布が用いられる。そのため、布と同様に平面である鉄板を利用して服のフォルムを得ること自体には、それほど大きな困難はない。 ここで、材料として厚みの大きい材料を利用してフォルムを得ることを試みた。立ち現れるフォルムに大きな差異がなくても、感じ取られる質感に違いが現れたとしたら、それが何によるものなのか、確かめられるであろうと考えたのだ。 |
制作中に引き起こされるのは、薄い鉄板を用いた場合と比較想定して、ただひたすらに各作業の労力が倍加されることであった。重量もまた劇的に増加するので、その取り扱いには身体的な脅威を感じるようになる。 フォルムができあがってみて眺めると、鉄という材料自体がもつ強度と、その厚さによる重量感から、否が応でも威圧感が生まれる。確かに材料の厚さが2倍になれば、占める体積も2倍になるわけだから、それは石の彫刻を眺めるときと同じような威圧感と言えるのかも知れない。 それでも、厚さという些細なファクターで、受け取る質感を大きく変化させるのだという実感は、私に存在のリアリティについて考えさせるきっかけを与えた。 これは、過去の作品である。 |